5日の夏休み

静かになった食後、おばあちゃんがおもむろに口を開いて、あんなの父母 夏休み あるか と聞くので 5日 だけ ある と答えた。それを聞いていたおかあさんが、夏の休暇のことだよ、ほら、日頃の疲れを癒す、夏の、長い休みと英語で説明してくれた。


そんなのわかってる、3週間も4週間も海沿いの街でゆっくり暮らすように休んで、海で泳いだりワインを飲んだり文字通り悠々自適な夏休みを送れるクロアチア人が、5日の休みを理解できるわけがない。「なあ、日本人の夏休み5日だってよ」って同情を含みながらネタにされて、日本にいたときの当たり前の価値観も、彼らのメガネをかけてみるとおもしろく映って新鮮だなと思った。

 

この5日はどこかに行ってゆっくりするための休暇というよりは、普段できないようなこと、たとえば土日に金曜日をくっつけてカレンダーにはない三連休をつくったり、なんでもない水曜日に休んでボーッと1日中エアコンのついた部屋で英気を養って残りの木金に備えたり、まとまった5日間ではなくて1日休みを小分けにしていつでも自由に使えて、からだを休めるために休むことが罪悪感なく許されるような特権で。お盆近くは特にいい雰囲気で好きだった。いつもより出勤する人が少なくて静かで、その非日常のおかげで空気は少し緩んで、エアコンの効いた夏の図書館みたいだった。

 

海外いってきていいですかって恐る恐る上司に訊いたら、10日でも30日でも行って真っ黒になっておいで〜ってわたしが気を遣わないように気を遣って笑いながら言ってくれて、表情とか椅子の向きとかその空間をよく覚えている。居心地悪くて息が詰まる時期とか悔しくてトイレで泣いたこととかめちゃめちゃあったけど、そういうのは4ヶ月も経つとぼんやりとすり落ちていって、今はいい人がたくさんいたなあってかけてもらった言葉をたまに思い出して噛み締めてる。